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ベトナム産ロブスタとEU森林破壊防止規則(EUDR)

ベトナム産ロブスタとEU森林破壊防止規則(EUDR)

2026年10月、アントワープのコーヒー輸入者がS16ウェットポリッシュのロブスタをコンテナ2本分契約します。コーヒーの実は11月と12月に中部高原で摘まれ、1月初めにホーチミン市から船積みされ、月末にベルギーの税関で通関する予定です。本船が出る前に、通関業者から質問がひとつ届きます。「デューデリジェンス声明の参照番号を教えてください」。番号はまだありません。森林破壊の規則は3度目の延期になると思い込んでいたのです。

規則(EU)2023/1115、いわゆるEU森林破壊防止規則(EUDR)は、2026年12月30日から大企業と中堅企業の事業者に適用されます。欧州委員会は2026年5月に、これ以上の延期はないと確認しました。この日から、EU市場に出す生豆は森林破壊を伴わず、生産国の法令に従って生産され、デューデリジェンス声明で裏付けられていなければなりません。声明を提出するのはEUの輸入者です。ベトナムの売り手が代わりに提出することはできませんが、輸入者が必要とするデータを渡す必要があります。その筆頭が、コーヒーを収穫したすべての農地の座標です。このガイドでは、適用日、双方の義務、船積み前に求めるべき書類をまとめます。

2度の延期を経た適用日

EUDRは2023年6月に発効し、当初は2024年12月30日から適用される予定でした。規則(EU)2024/3234でこれが2025年12月30日に延び、2025年12月に公布された規則(EU)2025/2650で再び2026年12月30日に延期され、サプライチェーン下流の義務も簡素化されました。欧州委員会は2026年5月4日の見直しパッケージでガイダンスとFAQを更新し、日付は据え置きました。

対象 日付
基準日:この日以降、農地で森林破壊・森林劣化がないこと 2020年12月31日
大企業・中堅企業の事業者、すべての下流事業者と取引業者 2026年12月30日
零細・小規模企業(木材分野以外) 2027年6月30日
インスタントコーヒー(HS 2101 11)、2026年の委任規則で追加 2027年12月30日

生豆はHS 0901に分類され、この項は2023年から規則の附属書Iに入っています。当社のロブスタは0901.11(焙煎していないもの、カフェインを除いていないもの)で申告され、同じ項の焙煎コーヒーも対象です。

基準になるのは、コーヒーがEU市場に出された時点です。輸入の場合は、税関が自由流通に置くことを許可した時点を指します。契約日や船積み日では決まりません。2026年10月に買い、2027年1月に通関するロットは規則の対象です。日付はすでに2度変わっているので、期限前後に到着する貨物を契約するときは欧州委員会のEUDRページを確認してください。

誰がどの義務を負うか

規則はサプライチェーン上の役割ごとに義務を割り当てます。起点は、最初に商品をEU市場に出す者です。

  • 事業者(オペレーター)は、コーヒーを最初にEU市場に出す会社です。FOBベトナムで買ったコーヒーなら、通常は通関申告に名前が載るEUの輸入者です。デューデリジェンスを行い、EU情報システムで声明を提出し、その参照番号を通関時に記載します。
  • 下流事業者は、たとえばEU域内でその輸入者から同じコーヒーを買う焙煎業者です。規則(EU)2025/2650以降、自分の声明は提出せず、仕入先の参照番号を受け取って保管します。
  • 取引業者は、EU域内でコーヒーを加工せずに転売します。中小企業でない取引業者と下流事業者は情報システムに登録します。全員が仕入先と販売先の記録を5年間保管します。
  • ベトナムの売り手はEUの外にあり、EU情報システムのアカウントを持ちません。それでも証拠の大半は売り手が持っています。実務では、輸入者のデューデリジェンスの質は売り手の書類の質で決まります。

当社の取引では、契約書とインボイス上の売り手は工場で、買い手は工場に直接支払います。Luasonは工場から書面で権限を与えられた販売代理店です。そのため、EUDR対応ロットのトレーサビリティ書類は工場が用意し、その内容は契約で定めます。

低リスクはベトナム産コーヒーにとって何を意味するか

2025年5月の欧州委員会実施規則(EU)2025/1093による国別リスク分類で、ベトナム(Viet Nam)は低リスク国とされています。高リスクは4か国(ベラルーシ、ミャンマー、北朝鮮、ロシア)だけで、ブラジルやインドネシアを含む約50か国が標準リスクです。

低リスクで省ける作業は一部です。低リスク国だけからコーヒーを調達する事業者は、第13条の簡易デューデリジェンスに従います。それでも第9条の情報は位置情報を含めてすべて集め、声明も提出します。省けるのは正式なリスク評価とリスク低減で、規則違反や迂回のリスクを示す情報を得た場合は省けません。当局の検査対象も少なく、低リスク産地は事業者の1%、標準リスクは3%、高リスクは9%です。

簡易ルートが使えるのは、ロットがベトナム産だけで構成されている間に限られます。標準リスク国のコーヒーをブレンドすれば、その部分には完全なデューデリジェンスが必要です。欧州委員会は国別分類を見直す予定なので、毎シーズンの前に国リストを確認し直してください。

輸入者が売り手から受け取る書類

第9条は、事業者が持っていなければならない情報を挙げています。それぞれの出どころはベトナム国内にあります。

第9条の情報 ベトナムでの主な出どころ 確認すること
製品の説明とHSコード 契約書と商業インボイス 0901.11、グレードとスクリーンが契約どおり
正味数量(kg) パッキングリスト、重量証明書 積んだ袋数と一致
生産国 原産地証明書 ベトナムのみ、他産地の混入なし
すべての農地の位置情報 集荷業者、協同組合、農園の測量 農地ごとに点またはポリゴン、下記参照
生産日または生産期間 収穫記録 ロットの収穫年度
仕入先と買い手の名称・住所 契約書 インボイスと同じ法人
2020年12月31日以降に森林破壊がない証拠 座標を使った衛星画像との照合 農地ごと、または農地群ごとの報告書やスクリーンショット
合法的に生産された証拠 土地使用権、許可、労働・税・環境に関する現地規則 輸入者が確認できる写しまたは要約

合法性の項目は土地の権利書だけでは終わりません。EUDRは、その農地に適用される生産国の法令の順守を求めます。土地使用権、環境保護、労働者の権利、人権、税、腐敗防止、そして貿易・関税の規則です。ベトナムの小農の場合、まずはその農地の土地使用権証明書から始まるのが一般的です。

位置情報は農地ひとつずつ

規則は位置情報を、小数点以下6桁以上の緯度・経度と定義しています。4ヘクタール以下の農地なら1点で足ります。4ヘクタールを超える農地には、境界をなぞる点の集まりであるポリゴンが必要です。情報システムに出す形式は通常GeoJSONファイルです。

ベトナムのロブスタの多くは小規模農家が育てています。そのため生豆コンテナ1本に、集荷業者や協同組合を経て輸出工場に届いた数十から数百の農地の豆が入ることがあります。その農地すべてをファイルに載せなければなりません。ベトナムコーヒー・ココア協会(Vicofa)は2026年8月、現在の供給の35%から40%がすでにEUDRの要件を満たせると推定し、残りはまだ測量中だとしました。EUDR対応ロットを売る輸出業者は、買い付けの段階からそのコーヒーを分けて管理し、倉庫で未測量の豆と混ざらないようにしています。

ラムドン省の温室で高床の乾燥棚に広げたコーヒー豆

イメージ写真

位置情報ファイルを自分で確認する

よくある誤りを見つけるのにGISソフトは要りません。売り手から届いたファイルで次を確かめます。

  1. geojson.ioなどの無料ビューアで開き、地図を見ます。点はファイルに書かれた省の農地にあるはずで、町の中心や湖、海の上にあってはいけません。
  2. 小数点以下の桁数を数えます。4桁の座標は精度がおよそ10メートルしかなく、6桁のルールを満たしません。
  3. ファイルで面積が4ヘクタールを超える農地には、すべてポリゴンがあるか確認します。
  4. 重複を探します。多くの農家に同じ点が使われていたら、農地ではなく集荷場所を測った可能性が高いです。
  5. いくつかの農地を、Global Forest WatchやEU森林破壊観測所(EU Observatory on deforestation)などの公開森林地図に重ね、2020年以降に樹冠の消失がないか見ます。
  6. 合計を比べます。農地の数と収穫期間から、パッキングリストの数量が無理なく採れるはずです。

おかしな点があれば、船積みの前に問い合わせてください。ロットが海上に出てしまうと、農地がひとつ欠けているだけでEUの税関で止まることがあります。

当社のロブスタとEUDR対応ロット

当社のカタログにはロブスタ生豆が3グレードあります。S18、S16、S13で、ウェットポリッシュまたはスタンダードの処理、60 kgのジュート袋入りです。ロブスタコーヒーのページにはグレードごとの水分、黒豆・欠け豆、異物の上限があり、ロブスタのスクリーンサイズのガイドでスクリーン番号の意味を説明しています。品質とEUDRは別の問題です。カップでは申し分のないS18のロットでも、書類がなければ税関を通れません。

2026年12月30日以降にEUで通関するロットでは、次のEUDR条件を契約に書き込みます。

  • ロットはEUDRに適合し、ベトナム産のみである。
  • 売り手は船積み前に、買い手が指定する形式(たとえばGeoJSON)で位置情報ファイルと合法性の証拠を渡す。
  • 収穫期間を明記する。
  • 売り手は5年間、買い手または所管当局からの問い合わせに回答する。

求める内容は買い手によって違うため、これらの条件は注文ごとに取り決めます。見積依頼に、コーヒーがEU市場向けであることと通関予定時期を書いてください。そのロットについて工場が用意するトレーサビリティ書類を確認してご連絡します。見積の前に質問があればお問い合わせください。

よくある質問

2026年12月30日より前に船積みしたロブスタにもEUDRは適用されますか?

決め手は船積み日ではなく通関日です。大企業・中堅企業の事業者が2026年12月30日以降にEUで自由流通に置くコーヒーは、ベトナムを早く出ていてもデューデリジェンス声明が必要です。

デューデリジェンス声明はベトナムの輸出者が提出しますか?

いいえ。最初にコーヒーをEU市場に出す事業者、通常はEUの輸入者が、EU情報システムで提出します。輸出者は、輸入者が必要とする位置情報と証拠を提供します。

ベトナム産コーヒーはEUDRで低リスクですか?

はい。実施規則(EU)2025/1093はベトナムを低リスク国に分類しています。事業者は簡易デューデリジェンスを行います。位置情報の収集と声明の提出は必要ですが、リスクを知らない限り正式なリスク評価は要りません。

焙煎コーヒーやインスタントコーヒーもEUDRの対象ですか?

焙煎コーヒーはHS 0901に入り、生豆と同じ日から対象です。HS 2101 11のインスタントコーヒーは2026年の委任規則で追加され、2027年12月30日から対象になります。

小規模な輸入者には何が変わりますか?

木材分野以外の零細・小規模企業は2027年6月30日から規則を適用します。EUの輸入者から買う焙煎業者は下流事業者で、自ら声明を出す代わりに輸入者の参照番号を保管します。

出典