Luason
← ガイド

ベトナム産黒胡椒のEU輸入:残留農薬・サルモネラ・鉱物油

ベトナム産黒胡椒のEU輸入:残留農薬・サルモネラ・鉱物油

ロッテルダムのスパイス輸入業者が、ベトナム産 G550 ASTA をコンテナ1本分買い付けました。届いた袋はきれいで、石も茎もなく、比重も合っています。ところが2週間後、自社ラボの報告書で殺菌剤がEUの残留基準値を超えていることがわかり、このロットはEU域内で販売できなくなりました。契約書には「ASTA品質」とあり、売り手はまさにそれを納めていました。しかしASTAは清浄度の表であり、農薬の項目はありません。

EUの食品法は、胡椒の残留農薬、サルモネラ、カビ毒、重金属、鉱物油を検査します。どれもふるいや石抜き機では取り除けません。そのため一つずつ契約書に独立した項目として書き、検査報告書で証明する必要があります。このガイドでは、それぞれの規則がホールの黒胡椒(HS 0904.11)の購入のどこに関わるかを順に説明します。

選別・清浄化と食品安全は別の仕事

グレード名は粒そのものを表します。G550 や G570 はかさ密度、FAQ や ASTA はどこまで清浄化したかを示します。詳しくは黒胡椒 500・550・570 g/l のガイドをご覧ください。下の表のEU規則は、グレードとは別に上乗せされる条件です。

買い手が気にする点 清浄化・選別で解決するか EU規則または一般的な基準 証明方法
石、茎、ほこり、軽粒 する ESA最低品質基準(買い手の要求):異物 最大1% ロット検査、サンプル
水分 一部、乾燥で ESA:最大12% ラボでの水分測定
残留農薬 しない 規則 (EC) No 396/2005、物質ごとのMRL、既定値 0.01 mg/kg 一斉分析の報告書
サルモネラ しない、加熱工程が必要 不検出であること(一般食品法) 検査、処理記録
アフラトキシン、オクラトキシンA しない 規則 (EU) 2023/915 検査報告書
鉛、PAH しない 規則 (EU) 2023/915 検査報告書
鉱物油(MOSH、MOAH) しない 定量下限で取締り、最大基準値は準備中 検査報告書、袋と機械の選定
エチレンオキシド しない EUでは食品への使用不可 検査報告書、同物質による燻蒸なし

石や虫はそれだけで返品の理由になり、きれいなロットほど殺菌もしやすいので、ASTAの清浄化には価値があります。それでも合法に販売できるかどうかは、表の下の6行で決まります。

残留農薬

EUでは規則 (EC) No 396/2005 により、農薬ごとに残留基準値(MRL)が定められています。胡椒について個別のMRLがない物質には、既定値の 0.01 mg/kg が適用されます。ほぼゼロに近い値なので、ベトナムで合法な薬剤でも、ドイツではロットが販売不能になることがあります。

ベトナム胡椒・スパイス協会(VPSA)は、2021年と2022年の胡椒サンプル284点をEU基準で検査しました。検出された有効成分は38種類で、検出2,462件のうち411件がEUのMRLを超えていました。多かったのはクロルピリホス、シペルメトリン、メタラキシル、イミダクロプリド、カルベンダジム、フェノブカルブ、プロパモカルブです。カルベンダジムとクロルピリホスはベトナムで禁止されているにもかかわらず検出されました。

購入するロットについて、ISO/IEC 17025 認定ラボによる一斉分析を求め、上記の物質が含まれているか確認してください。MRLは変わるため、輸入日時点のEU基準で判定することも契約で決めておきましょう。

見積もり依頼で仕向地をお知らせいただければ、そのロットに添付する残留農薬の報告書を確認します。

赤いラックに並んだガラス試験管

イメージ写真

サルモネラと蒸気殺菌

胡椒は屋外で乾燥させるため、鳥や動物が近づくことがあります。サルモネラは乾燥した食品の中では増えませんが、長く生き残ります。米国スパイス貿易協会(ASTA)も、乾燥ではサルモネラは死なないと指摘しています。

EU法にはスパイス専用の微生物基準はありませんが、流通する食品にサルモネラがあってはなりません。多くの購買仕様書では「25 g 中 不検出」と書きます。買い手がよく覚えているのはブラジルの例です。2022年、黒胡椒に関するEUの警報47件のうち45件がブラジル産のサルモネラで、ブラジル産黒胡椒への国境検査は今も50%です。

一般的な対策は蒸気です。ASTAの指針は、最も熱に強いサルモネラを少なくとも 5 log(10万分の1)減らすよう検証された蒸気処理を説明し、エチレンオキシドとプロピレンオキシドが認められていない欧州では、スパイスには蒸気が一般的だとしています。ただし蒸気には代償があり、香りや色が落ちることがあります。また飽和蒸気の後は、胡椒が湿ったままにならないよう乾燥工程が必要です。

自社で検証済みの工程を持つ粉砕業者は、ふつう未処理の胡椒を買って輸入後に蒸気処理します。一方、ホールのまま追加処理なしで再販売する買い手は、処理済みの胡椒が必要です。CBIによれば、胡椒の多くは今も輸入後に殺菌されていますが、この作業は産地へ移りつつあります。蒸気処理済みの胡椒をご希望の場合は、適用する微生物基準とあわせて見積もり依頼にご記入ください。そのロットの処理方法と検査報告書を確認します。

スパイスの放射線照射はEUでは 10 kGy まで認められ、「照射済み」の表示が必要ですが、CBIによると欧州の消費者は好みません。エチレンオキシドはEUでは食品の処理に一切使えず、CBIは2025年のスパイスの警報のうち16件をエチレンオキシド関連と数えています。そのロットがエチレンオキシドで燻蒸されていないという宣誓書を求めてください。

カビ毒、鉛、PAH

規則 (EU) 2023/915 は汚染物質の最大基準値を定めています。胡椒(Piper spp.)で買い手がよく確認する値は次のとおりです。

汚染物質 EUの最大基準値
アフラトキシンB1 5 µg/kg
アフラトキシンB1、B2、G1、G2の合計 10 µg/kg
オクラトキシンA 15 µg/kg
鉛 0.6 mg/kg
ベンゾ(a)ピレン 10 µg/kg
PAH 4種の合計 50 µg/kg

水分の多いままベトナムを出た胡椒は、コンテナ内でカビが生えることがあります。そのため欧州の買い手は水分12%以下を求めます。当社カタログのグレードは 13.5%(G500)、13%(G550)、12.5%(G570)なので、欧州向けには低い数値を契約に書いておくべきです。水分は注文ごとに取り決められます。PAHは主に煙から来るため、どのように乾燥させたかも確認してください。

鉱物油(MOSH と MOAH)

鉱物油炭化水素の2つの系統のうち、規制当局がより警戒しているのは MOAH で、一部に発がん性のおそれがあります。胡椒での主な汚染源は、鉱物系のバッチング油で処理したジュート袋と、機械やコンベヤーの潤滑油です。

2022年4月の共同声明以来、EU各国は MOAH が定量できる食品を回収しています。基準は定量下限で、脂肪4%以下の乾燥食品は 0.5 mg/kg、脂肪4%から50%の食品は 1 mg/kg です。2026年5月13日、加盟国は MOAH の法定最大基準値を承認しました。この案は規則 (EU) 2023/915 を改正し、2027年1月1日から適用され、一部の値はさらに後から適用されます。長期契約に数値を書く前に、EU官報で最終の文言を確認してください。

油を使ったジュート袋ではなく、新しいPP織袋か食品用の袋で包装し、清浄化ラインで食品用潤滑油を使っているかも確認しましょう。当社カタログの胡椒は 25 kg のPP袋入りです。取引先がロットの MOSH・MOAH 検査を求める場合は、見積もり依頼にご記入ください。

ベトナム産胡椒への国境検査

施行規則 (EU) 2019/1793 は、指定された国の指定された食品について、国境での検査頻度を定めています。2026年8月、ベトナムの報道はこのリストに載るベトナム産品を4品目と伝えました。ドリアン(20%)、ドラゴンフルーツ(30%)、オクラと唐辛子(各50%)です。ベトナム産の黒胡椒は含まれていませんでした。

それでもどの貨物も国境やその後の流通段階で無作為に検査されることがあり、不合格のサンプルは食品・飼料早期警告システム(RASFF)で警報として通知されます。リストは定期的に見直されるので、シーズンごとに最新版を確認してください。

ベトナムは欧州最大の黒胡椒供給国で、CBIによると2024年は58,000トンでした。CBIはまた、ベトナムの加工業者がブラジル、カンボジア、インドネシアから胡椒を輸入しており、輸出ロットがブレンドの場合もあると指摘しています。単一産地が重要なら、その旨をお伝えください。

契約前に確認すること

EU向けロットの仕様書には、通常次の項目が入ります。

  1. 見積もりどおりのグレードと規格(例:G570 ASTA)、水分は12%またはご指定の数値。
  2. 輸入日時点で規則 (EC) No 396/2005 に適合する残留農薬、規則 (EU) 2023/915 に適合する汚染物質、ISO/IEC 17025 ラボによるロットごとの報告書。
  3. サルモネラ 25 g 中 不検出、未処理か蒸気処理済みか、エチレンオキシド不使用。
  4. 新しいPP袋または食品用の袋、各袋にパッキングリストと一致するロット番号。
  5. 産地と、ブレンドを認めるかどうか。
  6. 誰がどこで(船積み時か到着時か)サンプルを取り、紛争時にどのラボの結果を採用するか。

当社の注文では、契約書とインボイス上の売り手は工場で、代金はお客様から工場へ直接お支払いいただきます。Luason は工場から書面で委任を受けた販売代理店なので、これらの項目は工場とお客様との契約に入ります。工場は HACCP と ISO 22000 に基づいて運営されています。船積み書類についてはベトナムの輸出書類、FOB・CFR・CIF の選び方はベトナムからの FOB・CFR・CIF のガイドをご覧ください。

サンプルを自分で確かめる

残留物と微生物はラボでしか測れませんが、その前に机の上でできる確認があります。

  1. 開けたばかりの袋のにおいをかぎます。かび臭さはカビ、薬品やガソリンのようなにおいは燻蒸や鉱物油の可能性があります。
  2. ひとつかみを白いペーパータオルでこすります。油じみが残ったり不自然に光ったりする胡椒は、油を塗られているかもしれません。
  3. 数粒をつぶします。新しい胡椒は鋭く樹脂のような香りがします。香りが弱ければ古い在庫か蒸気処理のしすぎかもしれません。
  4. 同じサンプルの一部をラボに送って残留農薬とサルモネラを検査し、残りの一部は封をして基準サンプルとして保管します。

最大3グレードまで無料サンプルを依頼でき、現在の価格は価格ボードでご覧いただけます。全グレードは黒胡椒のページにあります。

よくある質問

ベトナム産黒胡椒をEUに輸入するには蒸気殺菌が必要ですか?

法律が求めているのはサルモネラのない食品で、特定の処理方法ではありません。胡椒の多くは輸入後に欧州で蒸気処理されます。追加処理なしで販売する胡椒は、産地かEUのどこかで検証済みの加熱工程を経る必要があります。

ASTA品質で欧州市場に十分ですか?

十分ではありません。ASTAが扱うのは清浄度、つまり虫、排泄物、カビ、異物です。EU規則はこれに残留農薬のMRL、サルモネラ、カビ毒、重金属、鉱物油を加え、欧州の買い手はふつうESA最低品質基準と水分12%で取引します。

ベトナム産黒胡椒はEUの強化された国境検査の対象ですか?

2026年8月にベトナムで報じられたリストでは対象外で、そのリストはドリアン、ドラゴンフルーツ、オクラ、唐辛子でした。無作為検査とRASFFの警報は引き続き適用され、リストも変わるので、規則 (EU) 2019/1793 の最新版を確認してください。

ベトナム産胡椒でよく検出される残留農薬は何ですか?

284点を調べたVPSAの調査では、クロルピリホス、シペルメトリン、メタラキシル、イミダクロプリド、カルベンダジム、フェノブカルブ、プロパモカルブが多く検出されました。これらを含むロットごとの報告書を求めてください。

出典